3.アイルランド

1) 概要

 アイルランドは、独自の貧困指標を開発し、それを公的な削減目標としてます。2002年に改定反貧困戦略 (National Anti-Poverty strategy) を制定し、貧困削減の目標を設定しています。

 貧困の指標として使われているのは、EUの基準と同じく所得データに基づく相対的貧困 (中央値の60%未満)と、11項目の剥奪 (deprivation) の両者に該当する人の率です。アイルランドでは、この指標をConsistent貧困 (Consistent poverty) と呼んでいます。 

 貧困の削減目標は、社会保護局 (Social Protection Department) 属する社会的包摂室 (Office for Social Inclusion) が、専門委員会 (Technical advisory Group) のアドバイスの下に設定しています。専門委員会は、貧困モニタリングに関するデータ戦略を策定しています。 

 現在の貧困削減目標は、2010年6.3%であったconsistent貧困率を2012年までに4%、2020年までに2%まで削減することです。また、子どものconsistent貧困率を大人の貧困率に近いものにすること、就労者がいない世帯の全世帯に占める割合を削減すること (共に数値については今後決定予定) となっています。

 EUの社会的戦略「Europe2020」の貧困削減目標にコミットメントとして、EU定義による複合貧困 (consistent貧困、貧困リスク、剥奪のいずれかに該当する) の状況にある人数の削減目標2000万人のうち、20万人削減することを公言しています。

  また、これらの公的目標のほかに、サポート指標、マクロ経済や社会背景を表す指標なども設定されています。

 

           アイルランドの相対的剥奪に用いられる11項目

 

  項目

オリジナルの英文

① 過去1年間の間に暖房なし過ごした期間がある

Without heating at some stage in the last year

② 過去2週間の間に朝、昼、夕に外食することができない

Unable to afford a morning, afternoon or evening out in the last fortnight

③ よい2足の靴を買うことができない

Unable to afford two pairs of strong shoes

④ 過去1週間の間にロースト肉を買うことができない

Unable to afford a roast once a week

⑤ 肉または魚を2日に一度食べることができない

Unable to afford a meal with meat, chicken or fish every second day

⑥ 新しい服(お古でない)を買うことができない

Unable to afford new (not second-hand) clothes

⑦ 冬用の暖かい、防水コートを買うことができない

Unable to afford a warm waterproof coat

⑧ 家を十分に温めることができない

Unable to afford to keep the home adequately warm

⑨ 壊れた家具を買い替えることができない

Unable to afford to replace any worn out furniture

⑩ 1か月に一度友人や親せき・家族と飲み物や食事を一緒にすることができない

Unable to afford to have family or friends for a drink or meal once a month

⑪ 1年に1回友人や家族のためにプレゼントをを買うことができない

Unable to afford to buy presenets for family or freiends at least once a year

  

2) 公的な貧困削減目標と報告書

 アイルランドの公的貧困指標として用いられるのは、相対的貧困率とConsistent貧困率です。特に重要なのは、独自の定義を開発したConsistent貧困で、これが公的な貧困削減目標の核となっています。Consistent貧困は、相対的貧困と相対的剥奪の両方に該当する状況と定義されています。

 相対的貧困率は、EUの基準と同じく等価世帯所得の中央値の60%を貧困基準として、相対的貧困は、EUと同様に「貧困リスクにある(At risk of poverty)状況」と解釈されています。 

   アイルランド政府による貧困削減目標とモニタリングしている貧困指標の測定に用いられるデータは、EU-SILCです。

  社会保護省(Department of Social Protection)は、毎年「社会的包括モニター(Social Inclusion Monitor)」と題する報告書を発表しており、この中にこれらの指標のプログレスが報告されています。  

   また、中央統計局 (CSO) は、毎年「アイルランドのプログレスをはかる (Measuring Ireland's Progress)」と題する報告書を公表しています。この報告書に含まれる指標は、各種経済指標、価格、就労、社会、教育、健康など多岐にわたり、中でも社会 (social cohesing) の中に「貧困リスク (Risk of poverty)」として以下の4つの指標が含まれています (Ireland Central Statistics Office、2012)。 

 ①社会全体の相対的貧困率

 ②相対的貧困率、性別、年齢層 (0-14歳、15-64歳、65歳以上)

 ③Consistent貧困率 (性別、年齢3層別)

 

 ④Consistent貧困率 主な活動別 (就労、退職、家事、学生、傷病・障害、失業)                            

 

←前へ (2.イギリス)                                                                                                                  次へ (4.ニュージーランド)→