2) 社会開発省 (Ministry of Social Development) における貧困・格差指標

ニュージーランド政府において生活水準、貧困、格差などの統計を管轄しているのは、社会開発省 (Ministry of Social Development) です。社会開発省は、「社会報告書 (Social Reports) と「ニュージーランドの世帯所得」と題する2つの報告書で、貧困・格差に関する統計データを定期的に公表しています。

 

<1> 社会開発省「社会報告書 (Social Report)」

「社会報告書 (Social Report) 」 は、ニュージーランド国民のウェル・ビーイングを多分野のデータを駆使して解説する報告書です。報告書は毎年発表されてきましたが、政治的な理由から、2010年版が最終版となっています。

 

2010年版社会報告書では、1.健康、2.知識とスキル、3.就労、4.生活満足度、5.経済的生活水準、6.市民・政治活動、7.文化的アイデンティティ、8.レジャー、9.安全、10.社会的コネクション、の10分野の統計を網羅しています。各分野は、それぞれ1から6のデータから成り、これらを並列に列挙しています。異なるデータを集約して一つの指標をすることはしていません。データの出所は、統計局「世帯経済調査 (HES)」、社会開発省「生活水準調査 (LSS)」のほかにも、「生活の質調査 (Quality of Life Survey)」、「ニュージーランド総合社会調査 (GSS)」、「青少年調査 (Youth 2007)」等、多岐にわたっています。

経済的生活水準の分野には、1人あたり可処分所得、所得格差 (P20/P80)、貧困率 (固定貧困線)、住宅費が可処分所得の30%以上の人の割合、住宅が狭い人の割合が挙げられています。過去の「社会報告書」には、社会開発省が開発した非金銭的生活水準指標 (ELSI) が含まれていましたが、2005-06年からは、政治的な理由で削除されています。

「社会報告書」では、貧困線を時系列的に固定して貧困率を計算する手法を用いています (貧困線)。2010年版報告書では、2007年が基準であり、2007年の相対的貧困線 (2007年の等価世帯所得 [住宅費を除く]の中央値の40%、50%、60%) をCPIで調整した値を各年の貧困線としています。

2010年以前の社会報告書は、1998年を基準年としています。 

 

社会報告書 2010(social Report 2010)に含まれるデータ

 

 

人口

 

 

5.経済的生活水準

 

 

人口・人口増加率・地域別人口

1人あたり可処分所得

   

海外で生まれた人口

 

所得格差(P20/P80)

   

出生率

   

貧困率(固定貧困線)

   

人種

   

住宅費が可処分所得の30%以上の人の割合

家族構成

   

住宅が狭い人の割合

   

有子世帯

   

6.市民・政治活動

   

家屋の形態

   

投票率

     

言語

   

国会議員・地方議員の女性割合

 

同性結婚(同棲)

 

国会議員・地方議員のマイノリティ人種の割合

1.健康

   

健康差別にあったする人の割合(過去1年間)

健康寿命

   

汚職のレベル(国民意識)

   

平均寿命

   

7.文化的アイデンティティ

   

自殺率

   

NZテレビにおける地域・NZのプログラムの割合

喫煙率

   

マオリ語で会話できるマオリの割合

 

肥満率

   

(英語を除く)第一言語で会話できる割合

 

アルコール摂取(危険レベル)率

8.レジャー

     

2.知識とスキル

   

レジャーの満足度

   

就学前教育の参加率(3,4歳)

運動量が十分な人の割合

   

高等教育終了率(NCEAレベル2以上)

演劇や文化的な活動をした人の割合

 

高等教育参加率(Tertiary education)

9.安全

     

成人の高等教育学歴

 

殺人率

     

成人の英語習得率

 

なんらかの犯罪被害にあった人の割合

 

3.就労

   

犯罪が心配な人の割合

   

失業率

   

交通事故の被害者の割合

   

就労率

   

10.社会的コネクション

   

平均賃金(/時間)

 

電話とインターネットへのアクセス(自宅)

仕事上のケガの数

 

別居の家族との接触が「ちょうどいい」とした割合

ワーク・ライフ・バランスの満足度

12-18歳の親と過ごす時間が「十分である」と答えた割合

4.生活満足度

   

他者を信用できる(「いつも」「殆ど」)とした人の割合

生活満足度(「とても満足」「満足」)

過去1年の間、孤独と感じたことが「時々」「殆ど」

 

   

「いつも」と答えた割合

   

 

 

 

過去4か月にボランティア―の活動をした割合

出所:Ministry of Social Development Social Report 2010から筆者作成.

 

 

<2>「ニュージーランドの世帯所得報告書」(Household Incomes In New Zealand)

「ニュージーランドの世帯所得報告書」は、統計局の世帯所得調査 (Household Economic Survey (HES)) のデータを用いて計算された世帯所得、所得格差、貧困率などが記載されている報告書です。社会開発省の公式ではありませんが、職員により執筆されていて、社会開発省ホームページに掲載されています。

 

2012年版報告書は、2010ー2011年の 世帯所得調査 (HES) のデータをもとに計算され、1982年から2011年の情報をカバーしています (Perry 2012)。

1982年からという長期の所得分布の動向を記載し、ニュージーランド国民の経済状態の時系列トレンドを示すものは 本書のみとなっています。また 毎年新しい HES のデータを追加してアップデートされています。

 

 社会開発省「NZの世帯所得」2012版に含まれる指標                                           

A  

概念の整理

B

世帯所得(平均値、中央値、世帯類型別、所得10分位、所得シェア、再分配前・後所得)

C

労働市場・公的給付 就労率、失業率、低所得層の動き) 

D 

所得格差 (各層の所得の動き、ジニ係数、P80/P20率、P90/P10率等)

E 

貧困・低所得・生活困難(概念)

F

貧困率 (固定貧困率、相対的貧困率) 

G

所得の動態 (1982-2011)年齢層、性別、人種別、家族類型、子ども数別 

H

子どもの状況 (1982-2011)年齢層、性別、人種種別、家族類型別 

高齢者の所得

J 

貧困・格差・資産の国際比較

K(新規)

非金銭的指標 (ELSI等) (HES)

L(新規)

所得階層移動、貧困動態分析 (SOFIEパネル調査を用いて)  

出所: Perry (2012)

 

 ←前へ (4.ニュージーランド 1)                                                               次へ (4.ニュージーランド 3)→