3) 社会開発省による生活水準研究 (Living Standards Research)

  ニュージーランドにおける非金銭的な生活水準指標の開発は1999年に政府によって設置された年金制度についての諮問機関である「スーパー2000タスクフォース (Super 2000Taskforce)」が、高齢者の生活水準についての包括的調査および指標作成を指示したことに始まります。開発の歴史について以下にまとめてみました。

 

  ニュージーランドにおける非金銭的指標の歴史の開発                                            

1999

Super 2000 Taskforceが高齢者の生活水準を測るための包括的調査を指示。 

2000 

高齢者、高齢マオリ、勤労世代の3つの調査を実施(これらをまとめてNew Zealand Living  Standards 2000調査)

2001


 

所有物の制約、社会参加制約、economising行動、深刻な金銭問題、主観的貧困の指標を1つに統合した指標を開発 Material Well-being Scale (MWS(高齢者のみ) 

2002

New Zealand Economic Living Standard Index (ELSI) 指標の開発・公表

2004


 

New Zealand Living Standards 2004 調査を実施。現在の生活水準のみならず、生活水準を決定するライフヒストリー、健康、保育ケアへのアクセスなども調査

2005 

ELSIShort Form (ELSI-SF) を開発

2006 

Household Economic Survey (HES) 2006-7年より、ELSI-SF を含めた項目を調査

2007

ELSIを時系列分析に改良したFRILS指標の開発(実験的)

2008 

New Zealand Living Standards 2008、2004年調査より短く、物質的ウェル・ビーイングと生活困難、それらの国際比較に焦点

2009 

Living Standard Survey2008 (LSS 2008) を用いた報告書の発表(ELSI ほか)

2012  

Material Well-being Index (MWI) の開発 (ELSIの改定版)

2012 

HES 2012-13 り、MWI 24項目+5新規項目が調査票に加えられ、ELSI-SFの使用は廃止となった

 

① ELSIの特徴

ELSI は、イギリスにおける相対的剥奪指標の系列に属する指標です。しかし、ニュージーランドの ELSI が他の剥奪アプローチによる指標と異なる点は、「貧困層」となる生活水準の底辺の分布だけでなく、中間層までを含んだ生活水準の分布を測ろうとしている点です。通常の略奪指標は、必需品の欠如のみを勘案しているため、生活水準の最貧層の人々を identify するには適切ですが、中間層以上の生活水準の人々については指標がすべてゼロとなり、区別するのは難しいです。ELSIは、強制された欠如 (enforced lack)だけではなく、自由選択の制約(restriction on freedom) を基本概念として設計されています。

 

ELSIが、他の剥奪指標と異なる点は以下に集約されます: 

  ・より「贅沢品」と考えられている項目を物品・社会参加の両方に加えている.

  ・消費の節約行動(economizing activities)を項目に加えている(「お金を節約する

   ために、家族が食べるべき肉の量を少なくする」「お金を節約するために、破れてい

   る衣服を着続ける」等).

  ・より多くの主観的指標を取り入れている.

  ・主観的指標にもより高い生活水準ようにしている- i.e. あなたの日常のニーズは満たさ

   れていると思いますか?).

 こうすることにより、所得と同じように社会全体を10に分割する10分位を作ることができる指標の構築を目指しています。

 

② ELSI の概要

ELSIに用いられる項目リストは、次の条件をもとに選択されています。

  ・全社会において、同じように「欲っされる(desirable)」項目であること. 

  ・全社会において、同じように「重要 (important)」とされる項目で有ること.

  ・生活水準のレベルと整合性がとれること(分位の途中で上がったり、下がったりしな

   い、同一方向である、steep gradient がある分位がある等).

  ・10分位ごとの生活水準の差が的確に捉えられていること (Discriminating Power).

 

各項目について、全サンプル+8サブ・グループ [年齢18-64、年齢65+)、人種 (マオリ、非マオリ)、カップル、シングル、子どもあり、子どもなし] =9グループについて、以下の3つの条件をクリアするかを計算し確認したうえで、それが確認された項目のみが項目リストに追加されます。

  ●条件1 物品の所有と社会参加について:

   A 「生活水準ジェネリック・スコア (generic score) 」を14分位し、すべての項目に

     ついて 各分位における「その項目を欲する人の割合 (want)」=「そのモノを

             持っいる、または そのモノが欲しいと思っている人の割合.

   B 同上、「その項目を重要 (important)」と思っている人の割合.

   C 同上、「その項目を重要 (important)、または  やや重要 (fairly important)」と

     回答した人の割合.

   D 同上、「強制的に欠如 (enforced lack)(金銭的理由のみ)」しているとした人の割合.

   ●条件2 Eccomomizing hehaviors (消費の節約行動)について:

   A  所有10分位ごとに、「よく節約する (economizing a lot)」と回答した人の割合.

     B  同上、「時々節約する (economizing a little)」または 「よく節約する (

             economizing a lot)」と回答した人の割合.

       ●条件3 主観的生活環 (salf-rating) について:

   A  所有10分位ごとに、「(自己判断による生活水準が)とても高い (high standard

             of living)」と回答した人の割合.

   B  同上、「高い (fairly high) または とても高い (high)」と回答した人の割合.

 

 

ELSIの項目リスト(全39項目)
所有の制限(Ownership) 14項目 社会参加(Participation) 7項目
  0=強制的欠如か 1=それ以外の二値変数

 0=強制的欠如か 1=それ以外の二値変数

・電気

・電話

・安全なカギ

・洗濯機

・主要な部屋の暖房

・まともなベッド

・温かいふとん

・冬用コート

・まともな靴

・パソコン

・インターネット

・家財保険 

・特別の日の家族/友人へのプレゼント

・お客(家族)を泊めるためのスペース

・数か月に一度、家族/友人を自宅に呼んで

 食事をする

・3か月に一度、ヘアカット

・1年に一度の旅行

・2週間に一度の外出(交友または観劇等)

・3年に1回の海外旅行 

Economizing 15項目

主観的生活感(self-rating) 3項目

 0=よくある、1=まったくない

 5段階スケール (0=最悪、4=最高)

・量または質が劣っている肉を購入する

・新鮮な野菜・果物の量を少なくする

・古着を購入

・新しい服を購入するのをあきらめる

・破れた服を着ている

・もらいものの服で済ます

・寒くてもがまんする

・寒さをしのぐためベッドで過ごす

・医者に行くのを延期する

・めがねをかけないで凌ぐ

・処方された薬を購入しない

・家族や友人と会うのを控える

・店や商店街に行く回数を少なくする

・趣味に使う時間を少なくする

・葬式に行くのを控える 

・物質的な生活水準に関する主観的生活感

・生活満足度

・必需品を揃えるために所得が十分か否かの自己判断


 

 

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