4) 今後

<1> 統計公表の適時性

 EU-SILCの枠組規制(REGULATION (EC) No 1177/2003)によると、加盟各国は調査年の翌年の11月末までにクロスセクションの個票データを、翌々年の3月末までにパネル調査の個票データを欧州統計局に送信し、7月末までにクロスセクションの結果を公表することになっています。しかし、金融危機などの経済社会状況の変化が起きている際に 貧困・社会的排除状況がどうなっているかがすぐに分からないことに批判があります。これはどんな統計データでも起きる問題ですが、どのようにして適切な時にデータを公表していけるか (適時性) が問われています。

 また適時性とも絡んで、大きな危機が起きた時に世帯がどのように対応しているかを知ることも重要になっています。

 

<2> 物質的剥奪指標の見直し

 現在の物質的剥奪指標の定義の問題があります。欧州理事会は2015年の中間評価の際に貧困・社会排除指標の3指標の見直しを行うことを決定しています。特に、新たに子ども向けの指標を作成することを含めて、物質的剥奪指標については改良に向けた作業を行うべきと指摘しています。そこで、欧州統計庁からワーキングペーパーの形で2012年に検証結果と提言が公表されています。

 

 まず全体値としては、従来のタンパク質摂取、資金、1週間の休暇、家賃などの滞納、十分な暖、自家用車に加えて、新たに7項目を追加した13項目が提案されています 。また、1〜15歳の子ども向け指標として従来項目の3項目(家賃などの滞納、十分な暖、自家用車)に新たに15項目を加えた18項目が提案されています。

 

5)プロジェクト:GDP (GDP and beyond) を超えて

 欧州委員会では貧困・格差指標とは別にGDPの指標としての限界を踏まえ、人々の懸念事項や政策を反映した指標の改善を目的とした統計・測定方法の見直しを「GDPを越えて (GDP and beyond)」というプロジェクトのもと行っています。

 

 2009年8月に「GDPを越えて:変わりゆく世界の進歩の計測」という題名の委員会報告 (COM(2009)433) を公表。5つの短中期行動計画。

 行動1:GDPを補完する環境面、社会面の指標の開発 (環境包括指標、生活の質・幸福度) 

 行動2:政策決定のための即時性のある情報の提供 

 行動3:分配・不平等のより正確な報告 

 行動4:持続可能な開発成績表の開発 

 行動5:国民所得勘定の環境、社会的問題への拡張

 

 生活の質・幸福度という切り口で、今後、欧州統計局が毎年、新指標に基づき簡潔な状況報告を行うこと (行動計画7)、5年おきに詳細な報告書を公表すること (行動計画8) が指摘されており、貧困・格差指標の指標化の動きの一つとして引き続き本取組みをフォローしていくことが必要です。

 

ダウンロード
ESSC 2011 生活の質・幸福度指標 (試案).pdf
PDFファイル 308.7 KB

 

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