<3> 指標

ラーケン指標

 社会保護委員会傘下の指標分科会が検討を続け、2001年12月のラーケン首脳会合で承認を受けたのが通称「ラーケン指標」と呼ばれている指標群です。

 当初は、社会的排除の状況をもたらす最も重要な要素を示す高次の領域を表す主要指標10指標と他の問題を表すような二次指標8指標、といった合計18指標が選ばれました (下記表) 。またこの時点では計算に当たって欧州共同体世帯パネル (ECHP) を使用していました。その後、指標分科会が子どもの問題に焦点を当てるなど検討を続け、2003年に3指標の定義の変更と2新指標の追加の改定版を公表しています。

 ラーケン指標 (2001年) 

主要

指標

10指標

 

1.所得移転後の相対的貧困率、2.所得分布の不平等度(上位・下位20%比)、

3.相対的貧困継続率、4.貧困ギャップ、5.地域別雇用率の格差、6.長期失業率、

7/就業状態にある者が一人もいない世帯の者、8.早期退学者、9.平均余命、

10.健康自己評価

二次

指標

8指標

1.相対的貧困ライン前後での格差、2.現在に置き換えた相対的貧困率、

3.所得移転前の相対的貧困率、4.ジニ係数、5.相対的貧困継続率(50%基準)、

6.長期失業比率、7.超長期失業率、8.低学歴の者

(出典)European Commission, ‘LAEKEN’ INDICATORS- DETAILED CALCULATION

            METHODOLOGY -E2/IPSE/2003.

 

  さらに2009年9月に社会的保護・社会的包摂戦略のための指標として体系化し、従来の指標を①包括指標、②包摂関連指標、③年金関連指標の3つに分類しなおしています。包摂指標としては  主要指標11指標、二次指標11指標 (下記PDF参照)  が定められました。

  ただし、住居や子どもに関する指標の重要性は認識しつつも検討・開発中となっていました。

 

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包摂関連指標一覧 (2009年) 1.主要指標11指標、2.二次指標11指標
包摂関連指標一覧 (2009年) 1.主要指標、2.二次指標.pdf
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  1.主要指標:

   定義と属性別に取れる数値は、所得、雇用、生活、住居、健康、教育といった領域が

   カバーされています。

   このうち、相対的貧困率、貧困ギャップの2指標は包括指標にも含まれています。但し

   住居や子どもに関する指標の重要性は認識しつつも検討・開発中となっています。

 2.二次指標:

   領域は主要指標と大差ありませんが、より属性別の貧困格差に焦点があてられていま

   す。

   「⑧識字力の弱い生徒」に使用される PISA調査 の「読解力」とは、「自らの目標

   を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれ

   たテキストを理解し、利用し、熟考する能力」とされています。具体的には「読む行

   為のプロセス」として「テキストの中の情報の取り出し」に加えて、書かれた情報か

   ら推論して意味を理解する「テキストの解釈」、書かれた情報を自らの知識や経験に

   位置付ける「熟考・評価」の3つの軸で評価するとともに、内容面でも文章としての

   『連続型テキスト』と図表のような『非連続型テキスト』の2種類を読むことができる

   能力を身に付けている必要があるとされています。

   「レベル1」とは、PISA調査の平均得点が500点かつOECD加盟国の全生徒の約3分の

   2が400点から600点の範囲に入るように計算した上で6段階に分けられた上で、「最

   小限に複雑な課題をこなすことができる」という下から2番目の段階を指しています。

   2009年PISAの場合、406点以下が 「レベル1」に該当しています。

 

    ※PISA調査 

    OECDが進めている「PISA(Programme for International Student

    Assessment)

    生徒の学習到達度調査」と呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査。

    日本では国立教育政策研究所が調査の実施を担当しています。

 

 

 

 ②欧州2020戦略 (Europe2020)

 2010年6月の欧州評議会で採択された欧州2020戦略は、欧州の成長戦略に当たるもので、雇用、生産性、社会的統合を高め、スマートで持続的で、包摂的な経済を確立することを目指しています。戦略の主要目標は、雇用、研究開発、気候変動・エネルギー、教育、貧困・社会的排除という5つの形で示されています。具体的には 下記表の通りで、これらの目標は、欧州統計局が取りまとめ、発表する主要指標に基づいて監視されています。 

 欧州2020戦略の制定以降、欧州2020戦略の指標がラーケン指標から置き換わったという訳ではないとされています。

欧州2020戦略の目標

雇用 : 20〜65歳人口の75%という有職率を達成すること。

研究開発 : 欧州全域のGDPの3%が研究開発に投資されること。

気候変動・エネルギー : 温暖化ガス排出量を1990年対比で20%削減すること。エネルギー最終消費における再生エネルギーのシェアを20%に増加させること。エネルギー効率を 20%改善すること。

教育 : 早期退学者を30-34 歳の10%以下、高等教育学位保持者を 40%以上にすること。

貧困・社会的排除 : 相対的貧困または社会的排除の状況から2000万人以上が脱することで貧困を削減すること。

    

 相対的貧困または社会的排除の状況にある者とは、1.相対的貧困にある者、2.物質的に激しく剥奪されている者、3.働き手が働けていない家庭の者を足し上げたもの、と定義されており、3つのうち、重複して排除されている者の場合、1回だけ加算されています。 

 相対的貧困者は、社会保障移転後の等価可処分所得の全国中央値の60%を貧困線とし、それ以下である者と定義されています。また、 物質的に激しく剥奪されている者は、従来の剥奪指標と同じ9項目※のうち、4項目以上、欠けている、あるいは余裕がないといった生活状況に制約を受けている者と定義されています。そして、働き手が働けていない家庭の者とは生産年齢人口の者が過去1年の間、働ける期間の20%未満しか働いていない世帯に暮らす0〜59歳の者としています。

 ※剥奪指標9項目:

   ここでいう従来の剥奪指標とは、前出の「ラーケン指標」(2009) における主要指標11指標

   中の 剥奪指標。 (ただし、「ラーケン指標」では、うち3項目が欠けている場合と定義)

   1)予期しなかった出費、2)家から離れて年に1回休暇に出かける、3)住宅ローンあるいは

   家賃、公共料金あるいは分割払い、4)1日おきに肉または魚が付いた食事、5)住宅の暖冷

   房、6)洗濯機、7)カラーテレビ、8)電話、9)自家用車

   

 

 欧州2020戦略では加盟各国が定めた国毎のターゲット指標があります(下記表)。ただし、大半の国は欧州レベルでも目標を各国にブレークダウンし、目標人数を定めたものになっています。 

国別2020 貧困・社会的排除目標
国名  国別目標

ベルギー 

貧困または社会的排除で暮らす者を38万人削減

ブルガリア 

相対的貧困状態で暮らす者を26万人削減

チェコ

相対的貧困または社会的排除で暮らす者を3万人削除につとめることで

2008年水準(総人口の15.3%)で維持

デンマーク 

働けるのに働けない世帯に暮らす者を2万2千人削除

ドイツ 

長期失業者を33万人削除

エストニア 

相対的貧困率(社会保障移転後)を15%に削減(2010年17.5%)

アイルランド 

貧困状態に継続的にある者を2016年までに18.6万人削除

ギリシャ 

貧困または社会的排除で暮らす者を45万人削減

スペイン 

貧困または社会的排除で暮らす者を140〜150万人削減

フランス 

2007〜2012年に相対的貧困状態で暮らしていた者を3分の1、160万人削減

イタリア 

貧困または社会的排除で暮らす者を220万人削減

キプロス 

貧困または社会的排除で暮らす者を2.7万人削減

ラトヴィア 

貧困または社会的排除で暮らす者を12.1万人削減

リトアニア 

貧困または社会的排除で暮らす者を17万人削減

ルクセンブルグ

目標なし
ハンガリー 

貧困または社会的排除で暮らす者を45万人削減

マルタ 

貧困または社会的排除で暮らす者を6560人削減

オランダ

仕事のない世帯で暮らす者(0〜64歳)を10万人削減

オーストリア 

貧困または社会的排除で暮らす者を23.5万人削減

ポーランド 

貧困または社会的排除で暮らす者を150万人削減

ポルトガル 

貧困または社会的排除で暮らす者を20万人削減

ルーマニア 

貧困または社会的排除で暮らす者を58万人削減

スロベニア 

貧困または社会的排除で暮らす者を4万人削減

スロバキア 

貧困または社会的排除で暮らす者を17万人削減

フィンランド

貧困または社会的排除で暮らす者を15万人削減

スウェーデン 

非労働力(学生を除く)、長期失業、長期病気休業中にある男女の比率を

2020年までに14%以下に減少

イギリス 

2010年子どもの貧困法に掲げられた数値目標

 (出典 ) European Commission “The Social impact of the economic crisis and ongoing fiscal consolidation:Third report of the Social Protection Committee”, Annex 5, p. 136.
 
 
 

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