社会的排除と包摂

 近年、ヨーロッパ諸国では従来の「貧困」という考え方を発展させた「社会的排除(social exclusion)」という概念でさまざまな人が抱える生活問題を捉えるようになってきました。 フランスから発祥したこの概念は、貧困をただ金銭的や物質的な欠如だけではなく、人と人との関係性や、人と社会の関係性にも着目し、また、問題は排除された側(つまり貧困である人)にあるのではなく、排除する側(社会や制度)にあると考えます。社会的排除に対抗する力が、社会的包摂(ほうせつ)(social inclusion)です。日本でも、2011年4月に内閣官房に社会的包摂推進室という部屋が設置されました。

1.日本における社会的包摂政策の流れ

2011年1月 菅総理大臣(当時)の主導の元、厚労省、文化省、内閣府などの審議官レベルの「一人ひとりを包括する社会」

        特命チームが発足。→特命チームのホームページ(官邸)はこちら

2011年4月 内閣官房社会的包摂推進室が設置。初代室長は、派遣村の村長であった湯浅誠氏、室長代理は自殺対策NPOライフ

      リンクの清水氏。

2011年5月 特命チーム『社会的包摂政策を進めるための基本的考え方』を公表

2011年8月 特命チーム『社会的包摂政策に関する緊急政策提言』を公表

2011年9月 包摂室より『社会的排除の実態に関する調査報告書』が公表 →報告書のリンク(官邸HP)はこちら

2014年9月 日本学術会議分科会が『いまこそ「包摂する社会」の基盤づくりを』を公表
 

2.貧困から社会的排除(Social Exclusion)へ

 金銭的指標の最大の問題は、個々人のウェル・ビーイングが、ただ単に物質的な充足度だけでなく、人との交流の度合い、社会参加、政治的発言力、健康や教育、機会へのアクセス、などの非金銭的・非物質的な状況に影響されることです。

 

   資源の欠如が、「貧困」の唯一の問題ではないということは、半世紀に近い社会科学の研究の中でたびたび指摘されてきました(UN2010, p.7)。

 また、それらを貧困の測定に含めようという試みも存在し、この動きは、「貧困から社会的排除(Social Exclusion)へ」という社会政策における大きな政策転換の流れの一部となり、たどり着いたところが、欧州連合(EU)における「貧困と社会的排除指標」への開発、「EUROPE2020」の策定です。 

 

●「社会的排除」の概念を指標化し、測定しようとする試み

 貧困が、ある「状態」を表すのに対し、「社会的排除」は個々人が社会から排除されていく「プロセス」を表す。また、従来の貧困概念は、貧困が生じる要因については不問であり、個人の属性と見ていましたが、「社会的排除」の概念は、社会がどのようにその個人を貧困に追い込んだのかという「排除をする側=社会」の仕組みや制度を問題視しました。

 

 ヨーロッパ諸国では、「社会的排除」の概念を指標化し測定しようとする試みは 1990年代後半から取り組まれており 、現在の欧州連合の「EUROPE2020」の策定にたどり着いています。

 社会的排除を指標化するためには、以下の特徴が指標に反映されなければならないとしました。

  ①多次元の分野を対象としていること:

  ②「社会的排除」が自発的なものではなく、強制的なものであること:

  ③生活困窮の「蓄積」の「過程」がみえること:

  ④生活困窮者を取り巻く環境要因にも着目すること:    

 

                                                             

3.スティグリッツ報告書/幸福度指標

 非金銭的指標への関心の高まりをお墨付きとしたのが、2008年にフランスのサルコジ大統領によって設立された「経済パフォーマンスと社会プログレスの測定に関する委員会」です。

 本委員会は、国の発展を測る指標として、1人あたりGDPを唯一の指標とすることに疑義を掲げ、それを代替、または補完する指標の開発を提言することを目的としています。その提案は「スティグリッツ報告書」と呼ばれる報告書にまとめられました。 

 

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スティグリッツ報告書 (2009)
2008年 ニコラス・サルコジ フランス大統領の要請により立ち上げられた「経済パフォーマンスと社会プログレスの測定に関する委員会」の報告書について
スティグリッツ報告書.pdf
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幸福度指標
内閣府幸福度研究会が発表した幸福度指標(試案)体系図 (Takahashi 2013)
幸福度指標.pdf
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