3)OECDの「より良い暮らし指標」(OECD Better Life Index)

 OECDは、かねてから 「At a Glance」シリーズにあるような、各分野における既存のマクロ統計資料(例えば、一人あたりGDPや、平均寿命、識字率、乳児死亡率など)を横並びにして比較する報告書を数多く出版しています。貧困・格差に特に関するものとしては、「Society at a Glance 」シリーズが、幅広な社会の状況を表す指標をカバーしています。

 このようなマクロ指標を並列して社会の状況を概観する最新の試みが、2011年に始まった「Better Life Initiative(より良い暮らしイニシアティブ)」です。「より良い暮らしイニシアティブ」は、2009年のスティグリッツ報告書の提言や2009年の欧州委員会「GDPとその後(GDP and Beyond)」(EU 2009)を受け、さらに検討を加えたものとなっています(OECD 2011)。

 「より良い暮らしイニシアティブ」は、報告書のほか 独自のホームページ(http://www.oecdbetterlifeindex.org)によって、幅広い啓蒙活動を行っています。

 

 「より良い暮らしイニシアティブ」が提示するのは、11の分野(所得と資産、仕事と報酬、住居、健康状態、ワークライフバランス、教育と技能、社会とのつながり、市民参加とガバナンス、環境の質、生活の安全、主観的幸福)からなる「Better Life Index(より良い暮らし指標)」です。このイニシアティブが、これまでの 「At a Glance」シリーズの報告書と異なる点は、いくつもの分野の統計データを統合した一つの指標を作成したことです。

 このような複合指標については賛否両論あり(例えば、どのようなウェイトを適切か、一つの指標は他の指標を補完することができるのか等)、OECD自身も「複合指標にも弱点はあり、政策評価には利用できない」としているものの、異なるウェイト付け方法を用いても得られる一貫した国々の順位付けが得られており、一定の価値はあると言えるでしょう。

 

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OECD "Better Life Index" 「より良い暮らし指標」に含まれる統計データ (11分野)
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  「より良い暮らしイニシアティブ」: 人々の暮らしの質を測るための3つの概念

    ① 個人や世帯の状況に焦点を当てる。・・・経済全体の状況 (例えばGDPなど)は、

                      必ずしもその社会に属する人々のウェル・

                       ビーイングを表すものではないから。

    ② ウェル・ビーイングのアウトカム(結果) に注目する。・・・インプット (医療費や

                      社会保障支出など) や アウトプット (入院

                      患者数や社会保障給付の受給者数など)は、

                                                             必ずしも人々のウェル・ビーイングとは関

                                                             連しない。

    ③ 平均ではなく、分布に着目する。・・・・・特に、年齢、性別、所得および社会経済階

                                                             層によるアウトカムの達成度の不平等をみ

                                                             ることが重要である。

 

 「より良い暮らしイニシアティブ」: 統計データ選定の7つの判定基準

     ① 表面的妥当性があること (測定しようとする事象を的確に表していること)。

       ② 集約的なアウトカムであること (比較的広義の達成内容、例えば、「良い健康状

       態」であり、理解しやすいもの)。

       ③ 政策や制度に敏感であること (政策や制度を評価するという観点から)。

         ④ 学術的に用いられ広く認められていること。

         ⑤ 各国間の比較可能性が担保されていること。

         ⑥ 対象国数が最大となること。

         ⑦ データ収集が再現可能な調査法によるものであること。

 

 

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