貧困率の長期的動向:国民生活基礎調査1985~2012を用いて

 

●データは、厚生労働省「国民生活基礎調査」昭和61年~平成25年を統計法(平成19年法律第53号)

 第32条の規定に基づき、厚生労働省の許可を得て個票を二次利用したものです。 

●引用の際には、「阿部彩(2015)「貧困率の長期的動向:国民生活基礎調査 1985~2012を

 用いて」貧困統計ホームページ」と明記してくださるようお願い致します。

 

<問題意識>

•  近年、貧困率の上昇率が鈍化傾向にある。

•  一方で、一番大変な層の状況は悪化しているのではないか?


(各図は、図上で 左クリック すると拡大できます。)

相対的貧困率の推移

1)相対的貧困率

● 最新(2013年調査)の相対的貧困率は、全体で16.1%、子どもで16.3%。一方、大人が一人の「子どもがいる現役世帯」で54.6%。

「相対的貧困率」:所得中央値の一定割合(50%が一般的。いわゆる「貧困線」)を下回る          所得しか得ていない者の割合。

(平成25年国民生活基礎調査の貧困線(所得の中央値の50%)は122万円)


 2) 生活意識別にみた世帯数の構成割合の年次推移

「国民生活基礎調査」では、「大変苦しい」と答える人が増加(「やや苦しい」はさほど増えていない。)母子世帯では、H7(1995)から「大変苦しい」が33.8→49.5%。


勤労世代の貧困率(世帯タイプ別)

○ 男性の単独(一人暮らし)世帯の貧困率 は若干減少傾向、夫婦のみ世帯はほぼ横ばいとなっている。 一方、子どものある世帯の男性の貧困率は上昇している。

○ 女性については、夫婦のみ世帯の貧困率 がほぼ横ばいという点、三世代世帯が上昇という点は男性と同様である。単独世帯においては、男性に見られた減少の傾向はなく、横ばいか若干の増加となっており、また、一人暮らしの勤 労女性の3分の1(33.3%)が貧困の状態にある。


高齢者の貧困率(世帯タイプ別)

● 高齢男性の貧困率は全般的に低下傾向にあり、「ひとり親と未婚子のみ世帯」以外では、 どの世帯タイプで見ても、2006年に比べ、2012年の貧困率が減少している。

●   高齢女性の貧困率も全般的には低下傾向にある。「三世代世帯」以外では、どの世帯タイプで みても、2006年に比べ、2012年の貧困率が減少しているが、単独(一人暮らし)世帯の貧困率は、4割を超えている。

 

年齢層別、性別 貧困率(2012年)

 

● 年齢別、性別に相対的貧困率を見ると、男性においては20-24歳の貧困率が特に高く、25-29歳以降は10-13%で移行し、60-64歳から徐々に増加するものの、80歳以上でも17%台に留まっています。

● 一方、女性では同じく20-24歳で一つ目のピークを迎えますが、その後、50-59歳から急激に貧困率が増加し、70歳いじょう では20%を超える数値が続きます。中年期でも、女性の貧困率は男性よりも高く、35-39歳からは常に女性の方が男性よりも高い貧困率となります。

 

 

貧困率の長期的動向

●  1985~2012年

●  より長いスパンで見ることにより、何か見えてくるか。

●  貧困基準を中央値40%、60%に変化させた場合、異なる動向が見えるか。


(各図は 図の上で 左クリック すると拡大できます。)

 

1) 年齢3層でみた長期的動向

● 高齢層(男性)は1985から2009のかけて大きく減少。

● 高齢女性は1985から2006には変化がないが、その後は減少。 現役世帯の男女はほぼパラレルに上昇。

●  子どもは一番上昇率が大きい(男女差はなし)。

 

2) 異なる貧困線での動向(20ー64歳)

 

● 社会全体では、2006年→2012年に15.7%→16.1%で微増。勤労世代は、基準を40%,50%,60%のどれで見てもこの間ほとんど横ばい。

● 1985年からは、男性では若干40%-50%間の開きが大きくなっている。

 

 

3) 貧困率(男性)年齢階層別: 1985-2012


● 明らかな若年期の「山」の出現。近年(2009→2012)も上昇し続けている。

●  勤労世代期は、85年からは明らかに上昇。近年は落ち着いている?

● 高齢期は、85年からは大きく減少。現在も減少傾向。

 

4) 貧困率(女性)年齢階層別: 1985-2012

 

● 女性も若年期の「山」が出現し、現在も増大傾向。

● 中年期は、1985年に比べれば高い。 高齢期の貧困率減少は、男性ほど見られない。

● 高齢期の貧困率減少は、男性ほど見られない。

 

● 高齢期はむしろ、「貧困化」の時期が遅れるようになった(山の左シフト)。

 

貧困率のジェンダー格差は縮まったか


1) 貧困率の年齢層別の男女格差

 

● 子ども期はそもそも格差がない(はず)。傾向も不明瞭

● 20-24歳期は男性のほうが貧困率高いが、格差が縮小。

● 25~54歳は、格差が縮小しているか横ばい。

●  55~69歳は、格差が縮小。 70歳以上は、格差が拡大。

● 70最以上は、格差が拡大。

 

子どもの貧困率

 

1)  子ども(20歳未満)の貧困率: 世帯タイプ別 

(注)世帯タイプは「国民生活基礎調査」の世帯構造による。

● 子ども(20歳未満)の貧困率は、2006年から2012年にかけて上昇傾向にあります。

● 2006年から2009年にかけては、「夫婦と未婚子のみ世帯」、「三世代世帯」の貧困率が上昇した一方、「ひとり親と未婚子のみ世帯」の貧困率は減少しました。しかし、2009年から2012年にかけては、「夫婦と未婚子のみ世帯」の貧困率は横ばいですが、「ひとり親と未婚子のみ世帯」の貧困率は、2006年の貧困率を上回る率となりました。


 

2) 子どもの世帯タイプの変化:2006-2012

• 2006年から2012年にかけて、三世代世帯に属する子どもが大幅に減少(-7.3%)。その代わり

   に、「夫婦と未婚子のみ世帯」の子どもが増加(+5.4%)。

• 「ひとり親と未婚子」も微増(+1.9%)していますが、三世代世帯の減少の多くは、三世代世帯

   の貧困率より低い「夫婦と未婚子のみ」に吸収されており、子どもの世帯タイプの変化が子どもの

   貧困率の上昇の主原因とは考えられません。

• 世帯タイプの分布が2006年のまま、各世帯タイプの貧困率が2012年のレベルになったとしても、

   貧困率は殆ど変りません。

 

 

3) 子どもの貧困削減に対する再分配効果

        再分配前/再分配後の貧困率



● 2006年には、再分配後の貧困率の方が、再分配前より高いという「逆転現象」が起こっていますが、2009年では、逆転現象が解消されています。

● 2012年は、逆転現象は見られませんが、男児では再分配効果が弱まっています。女児では、再分配前の貧困率が上昇したこともあり、再分配効果も高まっています。


4) 子どもの貧困率:再分配前後

 

● 再分配の逆機能は2006年が最後だが、長期で見ると、再分配前の貧困率が10%も上昇。



貧困基準 40%、60%を用いて時系列の動態を観察する

1) 女性

● 貧困戦40%がより厳しい人々。

● 上昇が大木野は60%基準の方。


2) 男性


3) 子どもの年齢層別の貧困率の推移


4) 子どもの世帯類型別の貧困率の推移


● 母子世帯の貧困率が減少したのは共通。

● ここでは50%が一番sensitive.

● 父子世帯の動向はunstable (ただしサンプル数が149、52)



5) 子どもの貧困率世帯構造別 貧困の推移


なぜ 子ども・若者の貧困率のみ上昇が鈍化しないのか?

● 子どもの年齢別に貧困率(再分配後)を見ると、年齢が高いほど貧困率が上昇。

● 再分配前の貧困率から再分配後の貧困率の差が、政府の所得移転による貧困削減効果ですが、再分配前の貧困率が年齢の高い子どもの方が高く、また、政府貧困削減効果も大きいことがわかります。その結果、再分配前に比べて、再分配後のほうが、子どもの年齢層による格差は小さくなっています。

 

● 子どもの貧困率は、子どもの年齢よりも、父親の年齢に関係しています。現在の父親の年齢別に見ると、20歳代前半から50歳代後半にかけて、子どもの貧困率は減少します。そして、50歳代後半に再び上昇します。この傾向は、労働市場における男性の状況を反映しています。特に、20歳代前半(20-24歳)の父親を持つ子どもの貧困率が高くなっています。

● 子どもが生まれた時の父親の年齢別に見ると、子どもの貧困率は20歳代前半で高く、30歳代にて低くなっていった後、40歳代で上昇、50歳代前半では非常に高くなっています。

 

 

● 父親は高齢化している。

● 2012年時点の0歳児(2012年生まれ)の出生時の父親年齢が35歳以上は38.8%。

● 2012年時点の19歳児(1993年生まれ)の出生時の父親年齢が35歳以上は25.2%。

● 子どもの出生時の年齢が35歳以上の父親は、55歳までに子育てが終わらない。


● 年齢の高い層の子どもは、父親が若年(25歳未満)の割合はゼロだが、父親が高齢(55歳以上)の割合が多い。

● 年齢の低い層の子どもは、父親が若者の割合が多く。高齢の割合はゼロ。しかし、子どものお出生事に25最未満の割合はコオートが若いほど少ない。


注: (正規・非正規)の区分は、一般常雇(期間定めなし、契約1年以上、1月以上1年未満の契約、日々または1月未満の契約)の雇用者を、勤め先での呼称別に区分し最集計したもの。正規は「正規の職員・従業員」、非正規は「パート、アルバイト、派遣職員、契約職員、嘱託、その他」。 「日々または1月未満の契約」については、サンプル数が少ないため貧困率は集計していません。


● 一般常勤雇用(期間定めなし)が最も貧困率が低く、雇用者の中では契約期間が短いほど貧困率が高い。

● 勤め先の呼称を基に正規/非正規に分けると、非正規の雇用者の父親を持つ子どもの貧困率は3割を超える。

● 自営業者も貧困率が高く、自営業(雇用者なし)は「仕事なし」と並び4割近い貧困率の高さとなっている。



注: (正規・非正規)の区分は、一般常雇(期間定めなし、契約1年以上、1月以上1年未満の契約、日々または1月未満の契約)の雇用者を、勤め先での呼称別に区分し最集計したもの。正規は「正規の職員・従業員」、非正規は「パート、アルバイト、派遣職員、契約職員、嘱託、その他」。 「日々または1月未満の契約」については、サンプル数が少ないため貧困率は集計していません。


● 雇用者の中では契約期間による違いはそれほどない。一般常勤雇用であっても、子ども全体の平均を若干下回る程度。

● 母親が正規雇用であると、子どもの貧困率は低くなるが、その影響は父親の正規雇用に比べ小さい。

● 母親が非正規雇用であっても、父親の非正規雇用の場合に比べ、貧困率は低い。

● 母親が「仕事なし」の時の貧困率リスクは、一般常雇の場合と殆ど変らない。

● 家族従業員、自営業(雇用人なし)の貧困率は男性と同様に突出して高い。



● 父親の学歴別では、小・中学校卒の父親を持つ子どもの貧困率が突出して高い。

● 高校・旧制中、専門学校、短大・高専では、殆ど変わらない。

● 大学卒では6.3%、大学院卒では1.4%と貧困率は低くなる。



● 母親の学歴別では、小・中学校卒の母親を持つ子どもの貧困率が特に高く(42.8%)、これは父親が小・中卒の場合よりもさらに高くなっている。

● 高卒(旧制中卒)の場合は、20.3%と中卒に比べ半減するものの、依然として高い数値。

● 専門学校、短大・高専では、高卒よりも低い貧困率となっており、母親の学歴の方が、父親の学歴よりも、それが与える子どもの貧困率の差より大きい。

● 大卒、大学院卒は、共に、低い貧困率(約7%)となっている。



● 子どもの貧困率は子どもが4人以上の世帯にて特に高い

● 子どもの数が2人の世帯の貧困率が最も低い