8.日本と諸外国

 

  非金銭的貧困データの例

 ここでは、日本と諸外国を比較することができる、貧困の金銭的および非金銭的データのいくかを例示してみます。あくまでも、OECDなどの報告書から得た指標の例として参照ください。

 

カテゴリー

指標例

所得

相対的貧困率、貧困ギャップ、ジニ係数

生活

物質的剥奪(テレビ、電話、PC)、家計の状況

雇用

失業率、長期失業率

健康

主観的健康度

住宅

トイレ・風呂の欠如

教育

教育達成度

社会ネットワーク

社会的孤立、ボランティア参加率、他者への信頼感

社会参加

投票率

主観的幸福度

生活満足度

 

①相対的貧困率 (Poverty rate)

 相対的貧困率にも、さまざまな定義があります。ここで挙げた相対的貧困率は、最も一般的である等価世帯所得の中央値の50%以下の人数の間の比率です。データは、OECDの所得分布研究(OECD Factbook2011-2012)から。

日本では、国民生活基礎調査やその他の(世帯)所得を調べている調査に基づき、経年でデータを計測することが可能ですが、EUが提唱しているような世帯類型別、性別、年齢層別などの相対的貧困率を推計するためにはサンプル数の大きい調査であること、また、世帯所得を性格に把握するために世帯員全体の所得やその他の社会保障給付、税負担、社会保険料等を調べていること、が望ましいといえます。

 

    相対的貧困率(再分配後)                                      (単位:%

 

90年代半ば

00年前後

00年代半ば

00年代後半

日本

13.7

15.3

14.9

15.7

アメリカ

16.7

16.9

17.0

17.3

イギリス

10.5

11.0

10.3

11.0

フランス

6.6

7.6

7.2

7.2

ドイツ

7.2

7.6

8.3

8.9

スウェーデン

3.7

5.3

5.3

8.4

    (OECD Stat http://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=POVERTY

 

②貧困ギャップ

 貧困ギャップは、貧困の頻度(どれくらいの割合の人々が貧困か)と深度(貧困の人はどれほど貧困線から離れているか)の両方を数値に反映させた貧困指標です。所得(または消費)データのみで計算できるため、貧困率と同様のデータを用います。

 

  貧困ギャップ(再分配後)                  (単位:%

 

90年代半ば

00年前後

00年代半ば

00年代後半

日本

35.0

36.1

34.7

33.1

アメリカ

34.0

35.1

37.5

37.0

イギリス

24.0

28.0

29.7

33.1

フランス

21.8

19.8

23.8

23.9

ドイツ

26.6

24.9

24.2

24.0

スウェーデン

30.7

26.1

24.8

26.6

     OECD Stat http://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=POVERTY

 

③ジニ係数

 ジニ係数は、社会全体の分布の不平等の度合いを表す指標である。0(完全平等)から1(完全不平等)の値をとりますが、所得分布の場合、通常0.2~0.4程度の値を取ります。所得の不平等を表す指標は、この他に一般的なものとして「80/20率」「90/10率」「50/10率」などがありますが、ジニ係数は所得分布の下の方の不平等に比較的敏感です。

 

 ジニ係数(再分配後所得

 

90年代半ば

00年前後

00年代半ば

00年代後半

日本

0.323

0.337

0.321

0.329

アメリカ

0.361

0.357

0.38

0.378

イギリス

0.336

0.352

0.331

0.342

フランス

0.277

0.287

0.288

0.293

ドイツ

0.266

0.264

0.285

0.295

スウェーデン

0.211

0.243

0.234

0.259

OECD Stat http://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=INEQUALITY

 

④物質的剥奪(テレビ、電話、パソコン)

 物質的剥奪は、生活必需品の充足度を表す指標です。詳細については「貧困指標 (統計) の種類」”剥奪アプローチ” の項をご覧下さい。ここでは、OECDの報告書に含められた3つの必需品の充足状況を示しています。

 

  物質的剥奪 (%)

 

テレビ

電話

パソコン

日本

--

2

12

アメリカ

1

5

33

イギリス

0

0

10

フランス

0

1

11

ドイツ

0

1

18

スウェーデン

0

--

4

    (OECD 2008, Table 7.1

 

 ⑤家計

 もう一つの指標が、家計の状況です。公共料金 (ガス。電気等) が払えない、家賃が払えないといった状況は生活の頻拍度を表すとして諸外国では広く用いられている指標です。

 

 物質的剥奪(家計) (%)

 

公共料金等の請求が払えないことがある

家賃や地代の請求が支払いができないことがある

家計収支が赤字となることがある

日本

4.3

6.0

26.7

アメリカ

10.0

6.3

14.2

イギリス

0.1

4.9

12.9

フランス

7.2

6.2

16.2

ドイツ

2.7

2.4

11.3

スウェーデン

5.0

5.1

8.5

   (OECD 2008, Table 7.2

 

⑥ 住宅

 住宅は、社会的排除や剥奪の分野の一つとして挙げられることが多く、また、剥奪指標のデータとして用いられることが多い分野です。ここでは、あくまでも「貧困指標」としての住宅の不備を表す指標を列記しています。

 

    基礎的な住宅設備の欠如 (%)

 

住居に風呂・シャワーがない人口の割合

住居に専用の屋内水洗トイレがない人口の割合

過密住居で暮らす子どもの割合(0-17)

日本

1.5

6.4

23

アメリカ

0.0

0.0

26

イギリス

0.2

0.5

20

フランス

0.6

0.8

20

ドイツ

0.3

1.2

21

スウェーデン

0.5

0.0

20

     (OECD 2011, Table 4.4, 4.7

 

⑦ 社会ネットワーク/社会参加

 人との繋がり(社会的孤立の状況)や、社会参加(さまざまな社会的活動への不参加)は、貧困の重要な側面として認識されています。ここでは、OECDの「幸福度白書」に挙げられた項目を示しています。

 

   社会ネットワーク/ 社会参加 (%)

 

必要な時に頼りにできる家族または友人がいる人の割合

ボランティア活動の時間(1日当たりの時間(分))

選挙年齢人口に占める投票者の割合

 

1980年代

同左

 

 

2000年代

日本

89.7

4

74.7

66.6

アメリカ

92.3

8

59.3

58.2

イギリス

94.9

2

71.7

58.3

フランス

93.9

--

77.0

76.8

ドイツ

93.5

7

81.8

72.0

スウェーデン

96.2

4

88.6

80.6

       (OECD 2011Table 8.1, Table 8.3, Table 9.2
 

⑧ 教育

 教育(低学歴、低学力、生涯教育へのアクセス等)は、貧困の指標として適切で、この場合、社会全体の状況ではなく、社会の底辺層にかかわる指標を選ぶことが重要です。

 

   学歴別人口構成比                 (単位:%)

 

後期中等教育未満

後期中等教育以上

高等教育

2000

2010

2000

2010

2000

2010

日本

15.1

9.2

48.3

46.9

34.3

44.0

アメリカ

12.6

11.0

50.9

47.3

36.5

41.7

イギリス

37.4

24.9

36.9

36.9

25.7

38.2

フランス

37.0

29.2

40.9

41.8

22.0

29.0

ドイツ

18.3

14.2

58.2

59.2

23.5

26.6

スウェーデン

20.8

13.5

54.4

52.4

24.8

34.2

      (日本:国勢調査、他国:OECD Education at a Glance 2012

 

⑨ 雇用

 就労は、社会参加や社会的包摂の手段として有効であることが認められています。ヨーロッパ諸国では、就労の機会がないこと自体が社会的排除として扱われています。ここでは、雇用率(重要なのは、その反対の非雇用率)、失業率、長期失業率を挙げています。

 

  雇用率                      (単位:率)

 

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

11

日本

68.8

68.2

68.4

68.7

69.3

70.0

70.7

70.7

70.0

70.1

70.3

アメリカ

73.1

71.9

71.2

71.2

71.5

72.0

71.8

70.9

67.6

66.7

66.6

イギリス

72.5

72.3

72.6

72.7

72.7

72.6

72.4

72.7

70.6

70.3

70.4

フランス

62.7

62.9

64.0

63.7

63.7

63.6

64.3

64.8

64.0

63.8

63.8

ドイツ

65.8

65.3

64.6

65.0

65.5

67.2

69.0

70.2

70.4

71.2

72.6

スウェーデン

75.4

75.2

74.4

73.7

74.0

74.6

75.7

75.8

72.3

72.7

74.1

  OECD Stat http://stats.oecd.org/Index.aspx?QueryId=38900# 

 

 失業率                      (単位:率) 

 

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

11

日本

5.24

5.64

5.44

4.91

4.62

4.29

4.05

4.16

5.27

5.30

4.75

アメリカ

4.79

5.85

6.06

5.60

5.14

4.69

4.67

5.85

9.38

9.77

9.07

イギリス

4.78

5.11

4.89

4.68

4.71

5.46

5.34

5.37

7.83

7.91

8.00

フランス

8.64

8.73

8.48

8.87

8.91

8.86

8.03

7.41

9.16

9.39

9.30

ドイツ

7.91

8.65

9.36

10.39

11.28

10.42

8.75

7.61

7.83

7.16

6.01

スウェーデン

5.07

5.25

5.84

6.61

7.77

7.06

6.15

6.15

8.45

8.52

7.65

  OECD Stat http://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=LFS_SEXAGE_I_R 

 

 長期失業率 (%) 

 

1995年頃

2010年頃

日本

0.6

2.0

アメリカ

0.5

2.8

イギリス

3.8

2.6

フランス

4.8

3.7

ドイツ

4.0

3.4

スウェーデン

2.6

1.4

  OECD 2011,How’s Life, Figure 3.2

 

⑩ 健康

 健康分野では、貧困指標としては、乳幼児死亡率、医療サービスへのアクセスがない人の割合、主観的健康感、健康が理由で就労できない人の割合、などが挙げられます。ここでは、これらの日本の国際比較可能なデータがなかったため、健康寿命を挙げています。

 

 乳幼児死亡率 (%)

 

1990

2000

2010

日本

4.6

3.2

2.3

アメリカ

9.2

6.9

6.1

イギリス

7.9

5.6

4.2

フランス

7.3

4.5

3.6

ドイツ

7.0

4.4

3.4

スウェーデン

6.0

3.4

2.5

  OECD Health Data(version November 2012)and WHO Global Health Observatory 2012 

 

  健康寿命の推移                  (単位:歳)

 

2002

2003

2007

日本

75

72.3

77.7

75

72

78

76

73

78

アメリカ

69.3

67.2

71.3

69

67

71

70

68

72

イギリス

70.6

69.1

72.1

71

69

72

72

71

73

フランス

72

69.3

74.7

72

69

75

73

71

76

ドイツ

71.8

69.6

74

72

70

74

73

71

75

スウェーデン

73.3

71.9

74.8

73

72

75

74

72

75

   (総務省 世界の統計(原典:WHO Statistical Information System(WHOSIS))