厚生労働省が発表した日本の「所得ベース」の相対的貧困率の推移は、最も一般的な貧困率の推計方法です。
この相対的貧困率に相反する考え方が、絶対的貧困率です。この2つの概念の違いをまず理解することが重要です。
「所得ベースの相対的貧困率」とは、所得データのみを使って相対的貧困率を計算したものです。所得データが各国に比較的に標準化した形で統計が整備されているため入手しやすく、国際比較が可能であり、また計算方法が簡単なため、OECDやEU、UNICEFなどの国際機関で最もよく使われる貧困率の推計方法です。また、これを公式な貧困率の推計に使っている国もあります。
日本政府も、これまでこの手法を用いた貧困率を公表してきました。入手できたデータはすべてこちらで表としてまとめてありますので、ご覧ください。
所得データという限られた情報しか用いないことから、貧困である人の割合を完璧に推計しているわけではありません。所得データのみで貧困率を推計することの問題点については、こちらをご覧ください。
この推計方法にはさまざまな問題点はあるものの、どのような人が貧困になりやすいか、貧困率が増加しているのか、減少しているのか、国際的にみてどうなのか、といったことを容易に測るには十分であり、貧困統計の最も重要な指標です。
1.この推計方法には、世帯の合算所得とその世帯に属する世帯員の人数が把握できる世帯単位のマイクロデータが必要です。
マイクロデータとは、ある地域ごとなど複数の世帯が集計された平均値を示すようなデータではなく、一世帯ごとのデータ
です。通常、全国から無作為にサンプリングされた大規模なデータを用います。
2.各世帯の「等価世帯所得」を計算します。
等価世帯所得=(世帯内のすべての世帯員の合算所得)/(世帯人数の平方根)
なお、所得は通常「可処分所得」(税金や社会保険料を支払い、年金や生活保護、児童手当などの給付金を加えた後の所得)
を用います。
3.世帯内のすべての世帯員が等価世帯所得で得られる生活水準であると仮定します。
4.等価世帯所得の個人単位の中央値を計算します。
5.その値の50%(場合によっては60%)を「貧困線」とします。
6.等価世帯所得が「貧困線」未満の人を「貧困」と定義します。
7.貧困の人の割合を計算します(子どもであれば、全子どものうち、何%が「貧困」の子どもであるか)。